顧客のニーズが多様化した現代では、顧客全般に漫然と商品・サービスを提供することは得策ではありません。ターゲット顧客層を決めるために、市場をニーズ適合度の高い顧客層ごとに分類するマーケットセグメンテーションは、事業を成功させるために不可欠な手法と言えるでしょう。そこで今回の記事では、マーケットセグメンテーションの概要や主な用いる4つの変数、そして測定方法や活用事例に関して解説していきます。マーケットセグメンテーションに興味のある方は参考にしてみてください。マーケットセグメンテーションとは?マーケットセグメンテーションは、STP(Segmentation/Targeting/Positioning)分析と呼ばれるマーケティングの方法の第一ステップです。そして、セグメンテーションとは、市場を同じニーズを持つ顧客層に細分化することです。その後はターゲティングを行って、どのセグメントを狙うかを決定します。これによって顧客層を絞り込めば、そこに集中的にアプローチして売り込めるので、マーケティングの費用対効果が高まります。それから、ターゲット顧客層にどのような価値を提供するかを決め、いかに自社製品を魅力的に見せるかを明確にします。このポジショニングにより、競合製品に対する優位な立ち位置(ポジション)や、顧客に対する独自の役割を築くことができます。マーケットセグメンテーションで用いる主な4つの変数ターゲット市場を決めるために市場を切り分けるマーケットセグメンテーションには、以下の4つの切り口があります。ここでは、それぞれの切り口について詳しく見ていきます。マーケットセグメンテーションで用いる変数1:地理的変数(ジオグラフィック変数)地理的変数は、居住地域(国・都市)の規模や人口密度、経済発展の度合い、気候、文化・生活習慣、宗教、政策などの要素を基準にマーケットを分けます。例えばエアコンの市場特性は、気温を含む気候と大きな関連があると考えられています。マーケットセグメンテーションで用いる変数2:人口動態変数(デモグラフィック変数)人口動態変数は年齢、性別、職業、所得、教育・学歴、世帯規模・家族構成、家族のライフサイクルなどの要素を基準にマーケットを切り取ります。この変数は消費者市場の細分化で最もよく使われている変数です。マーケットセグメンテーションで用いる変数3:心理的変数(サイコグラフィック変数)心理的変数はパーソナリティー(価値観、趣向、心理的傾向)、ライフスタイル、社会的階層、購買動機などの要素を基準にマーケットを分類します。心理的変数の観点から、新たな気づきが得られることも少なくありません。マーケットセグメンテーションで用いる変数4:行動変数行動変数は過去の購買状況(曜日・時間、経路、製品知識や購買経験の有無)、使用頻度(ヘビーユーザーかどうか)、求めるベネフィット(経済性、利便性、迅速性)などの要素を基準にマーケットを類別します。セグメンテーション測定方法「4R」の4つの項目セグメンテーションの効果を測定するには、4つの項目を見ます。それが「4R」と呼ばれるもので、それによってセグメンテーションで切り分けたそれぞれのセグメントの有効性を判断します。4Rの項目1:Rank(優先順位)この項目で、セグメント(顧客層)が自社のマーケティング戦略から見た重要度によってランク付けされているかどうかを判断します。Rank(優先順位)がしっかり定まっていないと、力が分散して狙った成果が得られなくなります。4Rの項目2:Reach(到達可能性)この項目で、製品やサービスをセグメントまで効果的に届けることができるかを判断します。どんな製品やサービスも、顧客の下に到らなければ使ってもらえないので、意味がなくなります。4Rの項目3:Realistic(有効規模)この項目で、セグメントの規模が採算性に合うかどうか、その収益可能性を判断します。セグメントの規模は利益が確保できるものでなければなりません。そうでないと、赤字を積み重ねるだけになり、そのセグメントに立脚したビジネスの存続は困難です。4Rの項目4:Response(測定可能性)この項目で、セグメントの反応を十分に測定できているかを判断します。何事も反応がわからなければ、その効果を測定できません。そして、効果測定ができないと、改善に結び付かないので、この測定方法は重要です。マーケットセグメンテーションの5つの活用事例上記において、マーケットセグメンテーションで用いる4つの変数を説明しました。では、その変数をどのように使って、マーケットからセグメントを切り取るのでしょうか。以下の具体的な成功事例をもとに解説していきます。マーケットセグメンテーションの活用事例1:ワンダ・モーニングショットワンダ・モーニングショットはアサヒ飲料の朝専用缶コーヒーです。朝専用と謳っていることからもわかるように、アサヒ飲料のセグメンテーションは、時間(行動変数)という切り口で市場の細分化を行っています。同社が「朝」に着目したのは、現代ビジネスマンの8割が朝型生活を希望しており、朝の必需品はネット、メール、缶コーヒーという市場調査の結果が出たからです。また、缶コーヒーを飲むビジネスマンの4割が朝に飲むことも明らかになりました。それゆえ、モーニングショットは「朝」市場に先駆者として参入し、そこに原料に香りとコクのあるアラビカ種の新豆を100%使用するなどメーカーとしてのこだわりも加えて、結果的に成功を収めています。マーケットセグメンテーションの活用事例2:ハーゲンダッツハーゲンダッツは高級アムアイスクリームの老舗であり、特にバニラの人気は不動で異次元の長寿ヒット商品となっています。同社はセグメンテーションにおいて、「アラサー」と呼ばれる20代後半から30代前半の年代(人口動態変数)に着目しました。しかも、「アラサー」のパーソナリティ(心理的変数)を見ると、この年代には大きな贅沢を望む気持ちが少なく、自分へのご褒美にちょっと美味しいものを食べたいといった、わりと等身大の生活を楽しみたい人が多くなります。そこで、同社は「プチ贅沢なお菓子を求める大人」というセグメントを定義した上で、コンビニやスーパーなどで一般人が比較的高価なハーゲンダッツに触れる機会を増やして、「どこでも手に入る高級アイスクリーム」というセグメントを創出したのです。マーケットセグメンテーションの活用事例3:IQOSフィリップ モリス社のIQOS(アイコス)は、加熱式たばこです。たばこの葉を燃やさないので煙や強い匂いが出ず、有害物質も大幅に削減されています。それらの点が評価されて、日本でもヒット商品になりしました。同社は、IQOSの日本発売に合わせて、周囲への配慮が強い日本人の心理的傾向(心理的変数)を考慮して、健康被害の少ないたばこという概念を創作しました。そして、この概念で、周辺の人の受動喫煙を気にする愛煙家の関心を引いています。また同社は政策(地理的変数)も考慮して、IQOSはたばこの葉を使用するが、加熱式はたばこ製品ではないという論法を打ち出しました。そして、日本の政府関係者に、IQOSがたばこより低い税区分になるように働きかけています。マーケットセグメンテーションの活用事例4:JINS PC従来、メガネメーカーの顧客層は目の悪い人でした。しかし、目が悪くない人でも、パソコンやスマホを長時間使えば目が疲れます。それゆえ、JINS社はセグメンテーションの中で、目の健康というベネフィット(行動変数)を重視する層に着目しました。そして、彼らの目の負担を軽減したいというニーズに答えて、ブルーライトカットのメガネを開発しました。それがJINS PCですが、それによって、視力に問題がない人もメガネをかけるユーザーとして取り込んでいます。こうしてJINS社 は、普段メガネを使わない人のニーズをうまく拾い上げて、メガネ市場を一気に拡大することに成功しました。つまり、メガネ市場をある種の事務用品の市場として再定義し、目がいい人向けのセグメントを新たにメガネ市場に付け加えたのです。マーケットセグメンテーションの活用事例5:レッツノートパナソニックはノートパソコンの新機種(レッツノート)を開発するにあたり、法人をターゲットにしました。しかし、セグメンテーションにおいて、サラリーマンという職業(人口動態変数)をざっくりと捉えたわけではありません。ノートパソコンの使用頻度(行動変数)にも着目して、「営業で外回りをするサラリーマン」というセグメントを新たに創出しました。そして、持ち運びが楽で、長時間使用可能という彼らのニーズに応えて、本体の軽量化と長時間バッテリーの開発を行っています。その結果、レッツノートはヒット商品になりました。成功の要因は、セグメンテーションでパソコンを長時間使い続けるヘビーユーザーを見出し、彼らをターゲットに開発して、そのニーズをしっかりと満たしたことにあると言えるでしょう。マーケットセグメンテーションを活用しようSTP分析はマーケティング戦略の根幹です。そして、その第一段階であるセグメンテーションの肝は、共通する顧客ニーズを特定することにあります。人口減少のため、日本市場は縮小傾向にありますが、顧客のニーズは多様化しています。したがって、それを細かく分析すれば、他社が満たすことのできない新たなニーズを探し出せのではないでしょうか。今回紹介したマーケットセグメンテーションを活用して、自社がターゲットにするセグメントをニーズに合わせて柔軟に定義していきましょう。弊社Start-Xは総合的なマーケティング支援を得意としております。他のマーケティング支援会社と比較すると、コストパフォーマンス高く支援可能なメニューが多くございますので、何かお困りごとがございましたらお気軽にお問合せください。ご相談はいつでもオンラインで無料でご対応可能です。