デジタルデバイスの進化やネット環境の整備によって、BtoB・BtoC問わずデジタルマーケティングをいかに攻略するかは事業・サービスの成功を左右する重要な鍵となっています。顧客獲得においてデジタルマーケティングの重要度は増していますが、デジマへの知見や経験が少ないとどのように戦略を組み立てればいいのか悩むことも多いのではないでしょうか。出典:国内企業のデジタルマーケティング実態調査2022】 | MARKETIMES(マーケタイムズ)実際に株式会社メディアリーチが2022年に調査した「国内企業のデジタルマーケティング実態調査」では、担当者の約半数以上がデジタルマーケティングについて理解しておらず、「デジタルマーケティングに精通した人材がいない」「何から始めて良いかわからない」といったことが課題として挙げられています。本記事では、これからデジタルマーケティングに本格的に投資していきたい企業の担当者に向けて、自社のデジタルマーケティングを成功に導くための戦略立案の方法やポイントについて解説します。デジタルマーケティングの戦略を立てる前に知っておくこと顧客への理解がなければ成功しないデジタルマーケティングの施策は、Web広告・オウンドメディア・SNS・ダイレクトメールなど手法は多岐に及びます。最近では、YouTubeをはじめとした動画広告も注目を集め、多くの企業が予算を投下しています。そのため、Web広告の配信手法や広告クリエイティブの作り方・ターゲティングの方法など、ついついデジタルマーケティングは手法論で語られてしまいがちです。しかしながら、手法論で考える前に、そもそもターゲットとなる顧客はどのような悩みやニーズを抱えているのか、どのような状況に置かれているのかといった顧客への理解がなければ、顧客に「刺さるマーケティング」を展開することはできません。「とりあえずLPを作成し広告を出稿したが効果が出ない」「MAツールを導入したが活用できない」といった話はよく聞かれる話です。デジタルマーケティング施策を展開する際には、手法から考えるのではなく「顧客は誰なのか」「どのようなメッセージを届けるべきか」を定め、その上で最適な手法を決めていくことが求められます。戦略を立てて終わりではなくPDCAサイクルを回し続けるPDCAサイクルとは、Plan(企画)・Do(施策の実行)・Check(分析)・Action(改善)の頭文字を取った言葉です。デジタルマーケティングは戦略を立案し施策を実行して終わりではなく、施策の結果得られたデータを分析し、改善につなげることが求められます。例えば、デジタルマーケティング施策としてオウンドメディアを展開するのであれば、Googleアナリティクス等のアクセス解析ツールを用いて分析を実施します。想定していたトラフィック(PV・ユニークユーザー数など)を達成しているのか、どの経路から流入しているのか、コンバージョンなどユーザーは想定していた行動をサイト上で行っているのかといった分析を行い、課題を見つけて改善施策を打ち出します。デジタルマーケティングの戦略を立案する4つのステップここからは、具体的に担当者がデジタルマーケティングの戦略を立案する際の手順について解説します。STEP1:マーケティング目的の明確化STEP2:STPの定義STEP3:顧客理解とカスタマージャーニーの作成STEP4:施策の立案とKPIの設定STEP1:マーケティング目的の明確化デジタルマーケティングに注力するといっても、企業によって活用の目的はさまざまです。主な目的は以下のようなものが挙げられます。新規顧客の獲得資料請求やコンバージョン数の向上認知度アップブランディング顧客のLTV向上採用力の強化何となくWeb広告やオウンドメディアといったデジマ施策に予算を投下しても、費用に見合った効果が得られたのかを判断することはできません。目的を明確にすることによって正しいKPIを設計することができ、施策がうまくいっているのか・どのくらい数値を改善すべきなのかを決めていくことが可能になります。STEP2:STPの定義STP(STP分析)とは、セグメンテーション(Segmentation):市場の細分化ターゲティング(Targeting):狙うべき市場の決定ポジショニング(Positioning):自社事業の立ち位置の決定の3つの単語の頭文字を取ったマーケティングの代表的な分析手法です。セグメンテーションで自社事業を取り巻く市場環境を理解し、ターゲティングやポジショニングを通して狙うべき顧客層や自社の訴求ポイントを決定します。例えば、女性用の化粧品を販売している企業が、自社ECサイトにおいて顧客獲得を目的としてWeb広告施策を展開するとします。この際にユーザーとなる顧客に対して「どのようなメッセージを届ければ良いか」といった訴求軸を作ることができます。自社の化粧品が、市場において高価なのか安価なのか、若年層向けなのか30代以上を狙っているのか、成分に他社と比べてどのような違いがあるのかといったことをSTP分析を通して整理しておくことで、ユーザーが求めているニーズにマッチした訴求ができるようになります。STEP3:顧客理解とカスタマージャーニーマップの作成前章でもお伝えしましたが、顧客理解はデジタルマーケティングを展開する上で重要な土台となります。顧客を正しく・そして深く理解するためには、以下の3つの観点から顧客を分析することが大切です。ユーザーインタビュー顧客データの分析ペルソナ / カスタマージャーニーマップの作成①ユーザーインタビューユーザーインタビューとは、実際の顧客に直接ヒアリングを行い、ニーズや属性などを調査します。具体的には「サービスや商品の利用前にどのような悩みを抱えていたのか」「どれくらいの予算を想定していたのか」「導入や購入の決め手は何だったのか」「他社商材との比較ポイントは何か」といった点になります。いわゆるユーザーの生の声を収集できるため、新たな顧客の獲得に非常に有益なものとなります。②顧客データの分析ユーザーインタビューといった定性的な分析と並行して、データを活用した定量的な分析も同時に行うことが大切です。顧客理解の際に活用できる主なデータとして、SFAやCRMされたデータです。このようなツールを利用していなければ、営業やマーケティング部に蓄積されている商談リストや顧客リスト・または過去の資料請求のリストでも構いません。これらのデータには顧客の属性が記載されているため、ターゲティングの際に非常に重要です。また、受注だけでなく失注した理由を分析することができるため、デジタルマーケティングを展開する際の訴求ポイントを決める重要なヒントとなります。③ペルソナ・カスタマージャーニーマップの作成上記の分析が終わった上で、ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成します。ペルソナとは顧客になる理想的なユーザー層を、一枚の紙にまとめたものです。属性や置かれている状況を細かくイメージすることで、打つべき施策やターゲットとの適切なコミュニケーション方法を決めることができます。【人材サービスを提供するA社のペルソナ例】名前山田太郎年齢48歳性別男性家族構成妻(41歳)子供(8歳・3歳)居住地都内仕事製造メーカーの人事部長状況慢性的な人手不足に悩まされており、広告媒体にも出稿しているものの、思っている人材を獲得できていない。クウォーターごとに採用目標があり、達成しているが「各部署から欲しい人材とは違った」「より優秀な人材が欲しい」といった要望を受けているカスタマージャーニーマップとは、ターゲットとなるユーザーが自社のサービスや商材を認知してから、最終的に顧客となるまでの心理的な変化や環境の変化をまとめた図表です。特にBtoBのマーケティングにおいては、BtoCと比べて、比較検討の期間が長くなる傾向があります。そのため、短い期間ではなく、長いスパンで顧客とコミュニケーションを取る必要があります。カスタマージャーニーマップを作成することで、認知や比較検討など、フェーズによって取るべき最適な施策を理解することができるでしょう。STEP4:施策の立案とKPIの設定マーケティングの目的の定義・STP分析・そして顧客理解が終わったら、実際に打つべき施策を立案していきます。施策はKPIツリーと一緒に考えていきます。例えば、自社サイトからの売上アップを最終的な目標と置いた時に、以下のようなKPIツリーを設定することができます。KPIツリーとはマーケティングのゴールである頂点の数値をクリアするためには、どのような指標を設定すべきかをツリー構造でまとめたものです。例えば、サイト訪問者は十分にいるものの、売上高が向上しない場合、受注率や単価に改善の余地があり、打つべき施策はこららを改善するものとなります。デジタルマーケティングの最新トレンド最後に戦略立案の参考になる2023年のデジタルマーケティングの最新トレンドについて解説します。AIの活用AIの普及はここ数年のデジタルマーケティングの中心的な話題ですが、実際に自社メディアやECサイトの改善・Web広告の運用などに活用する実用的な例も徐々に増え始めています。特に、ECサイトにおいては、過去の購買履歴や行動履歴からおすすめの商品やサービスをAIが提案する「(AI)レコメンド」は、売上向上や顧客満足度向上に大きく役立つため、活用例が増えています。インフルエンサーマーケティング株式会社サイバーバズが実施した国内ソーシャルメディアに関する調査では、2022年時点での国内のインフルエンサーマーケティングの市場規模は約615億円にも及びます。市場規模は年々拡大することが予想されており、2023年には約741億円、2027年には約1,302億円まで成長することが予想されています。消費者の情報収集のプラットフォームや価値観が変化し、テレビや新聞といった主要メディアから移り変わっていることが伺えます。参考:【市場動向調査】2023年のソーシャルメディアマーケティング市場は1兆899億円、前年比117%の見通し。2027年には2023年比約1.7倍、1兆8,868億円に|株式会社サイバー・バズ動画マーケティングの普及自社のマーケティング活動にYouTubeやInstagram・TikTokといったSNSでの動画を活用する企業が増えています。インフルエンサーマーケティングと同様に市場規模が急速に拡大しており、国内動画広告の市場規模は2027年には1兆2,451億円に達すると予想されています。特に「ショート動画」と呼ばれる10秒〜30秒程度の短い尺の動画が若年層を中心に支持を得ており、短時間でいかにユーザーの認知獲得や興味関心を得られるかが動画マーケティングにおいて重要度が増しています。参考:サイバーエージェント、2022年国内動画広告の市場調査を実施 | 株式会社サイバーエージェント顧客を深く理解し、効果的なデジタルマーケティング戦略を実行しよう本記事では、デジタルマーケティングの戦略立案に欠かせない重要な考え方や実際の戦略構築の手順について解説しました。デジタルマーケティングはテクノロジーの変化によって、新しい手法や技術が毎年生まれます。そのため、自社でどの施策を展開するべきか迷うことも多いと思います。確かに最新のトレンドを押さえ、マーケティングに活用することは大事ですが、その前に顧客をよく知り、何を求めているのか、またどんなメッセージをどのように顧客に伝えるのかを整理することが大切です。弊社では、デジタルマーケティングの企画や戦略設計・実際の運用のご支援も行っています。無料のオンライン相談を実施していますので、デジタルマーケティングに課題を抱えている企業様がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。