年を追うごとに市場が大きくなっていっている、ネット通販の市場規模。平成30年度の経済産業省の報告書によれば、日本国内のBtoCのEC市場規模は約18兆円に拡しています。ソーシャルメディアやスマートフォンの普及により、今後ともこの勢いは伸びると考えられるでしょう。楽天やAmazonといった大手モール型ECサイトだけではなく、「BASE」や「STORES」のような”ネットショップ開業をかんたんにしたサービス”の隆興も、ネット通販市場拡大の要因と言えるでしょう。しかし、ネットショップの開設がかんたんになったと言っても、実際に商品を売って利益を出すには、対応すべき事柄がいくつも存在します。そこでこの記事では、ネットショップの作り方の7ステップと、出店方法やそれぞれの費用相場も解説していきたいと思います。作る前に知りたいネットショップの種類ネットショップを開業する場合、一からウェブサイトを構築するより、既存の出店サービスを活用する方法が便利ですが、ネットショップの出店方法の種類を大きく分けると3つ存在します。特に、モール型またはASP(アプリケーションサービスプロバイダ)型のサービスなら、セキュリティー面の安心感も高く、個人や小規模な企業でも少ない手間でネットショップを開設できます。ネットショップの出店では、コストと機能のバランスも特にシビアにチェックすると良いでしょう。ここでは、各出店方法別で特徴やメリット・デメリットを簡単に解説していきます。種類カスタマイズの幅年商の目安初期費用販売手数料具体例モール型狭い100万円未満低い高いAmazonASP型中程度100万円以上中程度中程度Shopifyオープンソース型広い1億円以上高い低い(オープンソース)モール型ECモールとは、インターネット上のショッピングモールのことで、多数のショップや企業が集まるプラットフォームです。代表的なものとして、Amazonや楽天市場が挙げられます。ECモールでは独自に店舗を持つのではなく、既存のプラットフォームの中に出店する形になります。メリットECモールは抜群の知名度を誇るため、自作の方法よりも集客力があるのが最大の魅力です。Amazonや楽天市場の中から商品を探すユーザーも多いため、初めて出店した場合でも一定の売上が期待できるでしょう。また、ECモールは出店方法のマニュアルが整備されているため、誰でも簡単に商品をネットで販売することができます。既存のプラットフォームを利用するので、システムを構築するための費用がかからないのもメリットといえるでしょう。デメリットECモール内のショップのデザインが、どの店もほとんど同じであることからもわかるように、ECモールには細かいルールがあるため、デザインや機能面での自由度が低いのが1番のデメリットです。たとえばAmazonでは店舗を構えるのではなく商品を出品する形となるため、ユーザーはAmazonで購入したという意識が強く、ショップのリピーターは増えにくいでしょう。顧客情報もプラットフォーム側に集積してしまうため自社で収集できず、マーケティング戦略が立てにくいといえます。ASP型ASP(ネットショップ作成サービス)とは、自社ECサイトが手軽に作れるサービスです。ECモールはさまざまなショップが集まるプラットフォーム内に自社ショップを出店するのに対し、ASPではサービスのシステム部分だけを利用するので、自社独自のサイトを作れます。ASPの特徴として、ネットショップが無料作成できるものが多いことです。有料のものと比べて機能がシンプルだったり、決済方法が自由に追加できなかったりなどの制約はありますが、「売れるかどうかわからない」という場合でも初期費用をかけずに始められます。ですが、無料のサービスは利用料がかからない分、販売時の手数料が高めに設定されています。そのため、初めてネットショップを立ち上げる場合はリスクが低い無料のプランを、ある程度の売上(年商で100万円以上)が立ってきたら有料のサービスを利用するとよいでしょう。メリットASPはデザインテンプレートが豊富なので、スキルや知識がない場合でも簡単にネットショップを開設できるのが大きな魅力でしょう。また、無料のASPは初期費用・月額利用料無料で、商品が売れた場合にのみ手数料が発生するため、低リスクで始めることができます。オープンソースやECパッケージほどではないですが、AmazonなどのECモールと比べるとデザインの自由度も高いので、自社ブランドらしいサイトも構築可能でしょう。さらに、困ったことや問題があれば、サービスを提供している会社へメールや電話などで問い合わせてサポートしてもらえるのもメリットといえます。デメリットECモールよりはデザイン性のある自社サイトができますが、オープンソースやECパッケージなどの方法と比較すると、デザインやシステム面の自由度は低いのがASPのデメリットです。また、各サービスでさまざまなプランがあるため、もし誤って自社に合ってないプランを選んでしまうと想定外の手数料などが発生し、赤字になる可能性もあります。サービスによっては、無料のフリープランと有料のプランが用意されているため、ネットショップの事業規模に合わせて最適なプランを選べます。ネットショップの成長に合わせてプラン変更し、事業規模に合ったコストで運営できるので、将来を見据えてネットショップを開業する方におすすめでしょう。オープンソース型・パッケージ型・フルスクラッチ型まずはじめにそれぞれの制作方法を簡単に整理すると下記の通りになります。オープンソース型とは、外部に公開されているソースコード(プログラム)を用いてネットショップを作成する方法です。パッケージ型は、ネットショップの作成に必要な機能がすべてパッケージ化されている製品で、開発会社が販売しているためその製品を利用する方法です。オープンソースが無償で提供されているのに対し、ECパッケージは各企業がそれぞれ制作しているため、初期費用は数百万円程度かかります。フルスクラッチ型は、その名の通りで既にあるシステムやアプリケーションを使用せず、すべてオリジナルでECサイトを構築する方法となります。カスタマイズ性は高い一方で、大規模な予算がかかるため他の構築方法と比べて費用は最も高くなります。メリット共通するメリットとしては、高度なカスタマイズが可能で、企業のニーズに合わせた機能を実装できる点が挙げられるでしょう。大規模なECサイトの開発にこれらの手法は向いています。デメリット高い技術力が必要で、開発には時間とコストがかかる点が挙げられるでしょう。どの手法も専門知識が必要となり、アップデートやセキュリティの対応も求められることから初期費用や維持費用ともに高額になりやすい傾向にあります。ネットショップの作り方|7ステップで紹介ネットショップの成功には入念な下調べや準備が不可欠です。次の7つのステップにしたがって、ネットショップ開業を実現しましょう。ショップのコンセプトや商品を決め事業計画を立てる法律やシステムの規約に違反していないか確認する扱う商品やサービスに応じて届出・許可申請を行う商品の仕入れ方を決める自社サイトかモールかに出店するか決める決済や配送の方法を決めるネットショップを制作する1.ショップのコンセプトや商品を決め事業計画を立てるネットショップのコンセプト、ターゲット、商品、ブランディング方針など、まずはビジネスの柱となる部分をしっかり計画することで、ネットショップの成功確率を高めることが重要です。個人の好みや思いつきでなく、市場やトレンドについて丁寧なリサーチを重ねて計画をまとめていきましょう。また、屋号(ネットショップ名)、ウェブデザインのイメージやショップロゴ、イメージカラーなども、コンセプトやターゲットに合うものを考えましょう。2.法律やシステムの規約に違反していないか確認する法律や使うシステム(特にモール型、ASP型)の規約に違反していないか確認することも非常に重要です。違反していると出店できない、出店できても即停止・アカウント削除などの対応になることもあります。違反になりやすい商品カテゴリは、お酒や食品・化粧品・高度な医療機器などがあります。自分たちで販売していく商品が法律やシステムの規約に問題ないかは不安であれば専門家などにも相談して問題ないかクリアにしておきましょう。3.扱う商品やサービスに応じて届出・許可申請を行うネットショップを始める以上、個人や企業でも「法律を知らなかった」では済まされません。ネットショップで販売する商品が以下に該当する場合は、営業許可や届け出が必要になることがあります。商品のカテゴリ必要な届出・許可申請商品の具体例お酒・通信販売酒類小売業免許クラフトビール食品食品衛生責任免許-中古品古物商許可証中古品高度管理医療機器高度管理医療機器販売許可証コンタクトレンズ自作の化粧品化粧品製造販売業許可-4.商品の仕入れ方を決めるネットショップで販売する商品やその方向性が固まったら、仕入れ先を調べましょう。品質、発注から納品までの日数、入荷の最小ロットなどのほか、ビジネス規模や拡大に応じて卸してもらえるかといった点まで、問い合わせて確認しましょう。自分たちで手作りアイテムを制作したり仕入れるのであれば、製作スケジュールや材料の安定調達などについても確認が必要です。5.自社サイトかモールかに出店するか決めるネットショップの事業計画が明確であると、商品ジャンルやブランディング方針により、適した出店方法を判断しやすくなります。初期費用と月額固定費はかかるが集客に強いモール型か、費用が比較的安価でブランディングの自由度が高い有料ASP型か、商品ページ数などの制約があっても初期費用と月額固定費ゼロの無料ASP型か。最終的には運営のしやすさなども含めて総合的な視点を持って判断していきましょう。一度構築や出店すると簡単に移管できないためしっかりとした精査が重要です。6.決済や配送の方法を決める銀行振り込み、コンビニエンスストア決済、クレジットカード決済、電子マネー決済など、ネットショップの決済方法は様々です。事業計画で定めたターゲットが、どの支払い方法と親和性があるか、リサーチに加え、お客様個人を想像しながら考えてみましょう。ASP型の出店の場合は、あらかじめ決済方法が決められている場合もあります。ネットショップからお客様への配送についても、利用する配送事業者のサービスを事前に決めておく必要があります。配送料金は、商品価格の設定にも影響を及ぼします。配送事業者によっては、集荷サービスや割引料金のある配送契約を交わすこともできます。7.ネットショップを制作するいよいよ実際にネットショップを開設するプロセスの始まりです。この段階で、ネットショップ名、サイトのURLなどを決定する必要があります。トップページ、商品ページ、問い合わせページなど、競合ネットショップを参考にするのも良い方法でしょう。といっても、モール型やASP型であれば、用意されたフォーマットやテンプレートから必要な要素を選択することでネットショップが完成するため、初めて出店する人でもさほど難しくないケースも多いでしょう。ページの背景色、文字色、ロゴ画像など、判断に迷うときは、事業計画に沿ってコンセプトを体現することを考えましょう。トップページに載せるインパクトのある高画質の写真、ネットショップの説明、商品写真、商品説明など、掲載するコンテンツも必要となります。個人で作り上げたコンテンツを、身近な人に客観的にチェックしてもらうことも有効です。もし自社でネットショップを制作するのが難しい、やり方を相談したいなら代行サービスの利用がおすすめです。弊社でも多数のECサイトの制作実績がございますので、お悩みの方がいらっしゃいましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。ネットショップを作る際にかかる費用ECサイト(通販サイト)を構築するにあたって、「どれくらいの費用がかかるのか」という疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。制作するサイトはそれぞれ全くの別物になるので、一概には言えませんが、相場というものはあります。ECサイトの構築方法には、以下のような種類があります。ここでは、構築方法別に費用相場と維持費用を整理していきます。費用相場は構築に必要なコストとなりますが、ECサイトはただ単に作るだけではなく、構築後に運用コストがかかりますので維持費用に関しても参考に記載しております。種類初期制作費用月額費用販売手数料モール型無料~数万円無料~数万円ありASP型無料~数万円無料~10万円程度ありオープンソース型無料10万円以上なしパッケージ型数百万円以上10万円以上なしフルスクラッチ型数百万円以上10万円以上なしECサイト制作の初期費用は、そのサイトの規模や実装する機能によって大きく変動します。しかし、あえて相場を問うのであれば、小規模なものなら100万円以下、中規模なものなら200~500万円程度が一応の相場と言えるのではないでしょうか。ECサイトの開発会社には、自社で開発した独自パッケージではなくオープンソースといってEC CUBEやWordPressなど、ネット上に公開されているシステムを基に開発するケースもあります。こうしたECサイトの構築であれば、比較的費用が抑えられ、100~300万円程度の費用となるようです。また、100万円以下で構築できる小規模な案件もあります。これもオープンソースを基に制作され、ベースとなるオープンソースシステムに対してテンプレートによるデザインに簡単な変更を加えたもの、いくつかのオプション機能を選択できるようにしたものなどです。オリジナルで構築するECサイトに比べると自由度は限られますが、必要とされる一通りの機能は実装できます。ネットショップの制作~開店にあたりやっておくことネットショップの制作ができたら、あとは下記の開店準備を行っておくのがよいでしょう。法人や個人かによっても異なりますが、必要と思われるものがあれば実行に移してみてください。サイトが問題なく動くか開店前にテストを行う事業開始の際は開業届・青色申告の届け出を提出する補助金・助成金を活用するサイトが問題なく動くか開店前にテストを行うサイト制作が完成した後に、お客様の視点に立って試験運用してみることが大切です。顧客のもとでエラーが発生する前に、社内でエラーを改善することができるためです。実際に制作したネットショップを使ってみて(もしスタッフがいるのであれば、スタッフも動いてみて)問題がないか確認するようにしましょう。ここでなにかしらのエラーが生じた場合には、再度制作プロセスに戻る必要性がありますが非常に大切な工程となりますので、面倒だと思わず1つ1つ細かく機能を確認するようにしてください。事業開始の際は開業届・青色申告の届け出を提出するあなたがもし個人でネットショップを開始しようと考えているのであれば、開業届や青色申告の届けておくことを推奨します。青色申告をしておくことで、最大65万円の特別控除を受けられます。また、開業届の提出は必須ではありせんが、前述した青色申告ができたり、屋号名義の銀行口座を開設できたり、法人用のクレジットカードが作れたり、公的証明になったりと事業を行う際のメリットが得られます。これからネットショップで事業を始めたいと考えているなら、開業届を提出しておきましょう。参考:事業を始めたとき・廃止したとき - 東京都主税局補助金・助成金を活用するECサイトの構築に活用できる補助金があり、ネットショップの開設にかかった費用に関して、実質的な費用負担を抑えることができます。主な補助金として、以下が挙げられます。小規模事業者持続化補助金IT導入補助金各自治体によるIT補助金事業再構築補助金この中で特におすすめなのは、中小企業・小事業者のITツールの導入を支援するIT導入補助金です。ECサイトの構築、リニューアルも対象となります。補助額が50万円超の場合の補助率は2/3以内で、最大で350万円の補助が受けられます。名称対象窓口小規模事業者持続化補助金小規模事業者及び、一定の要件を満たす特定非営利活動法人日本商工会議所IT導入補助金IT導入補助金事務局に登録されたITツールを導入する事業者IT導入補助金事務局事業再構築補助金個人~中規模企業事業再構築補助金事務局ネットショップの作り方にお困りの際はStart-Xへご相談くださいここまで、ネットショップの種類や作り方の7ステップ・開店にあたって必要な準備などを開設してきました。ネットショップは立ち上げることがゴールではなく、サイトを作ってからがスタートです。開店したあとは、サイトの運用だけでなく集客やカスタマーサポートなど多くの業務が発生してきます。もし社内でリソースやノウハウが不足しており懸念があるようでしたら制作代行サービスや運営支援サービスの利用をおすすめします。弊社では、これまで500社以上の企業様の支援実績がありますのでどのようにネットショップ立ち上げをしていくかであったり、EC事業自体に何かお悩みを抱えている企業様がいらっしゃいましたら、無料相談も承っておりますのでぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。