現在日本国内では人口減少に伴い、新規顧客獲得の難易度は年々上昇しています。これに伴いリテンションマーケティングをはじめ、既存顧客にフォーカスしたマーケティング手法に対するニーズが高まっています。しかし、既存顧客と継続的な関係を築くのは簡単ではありません。リテンションマーケティングの重要性や活用方法を理解したうえで戦略に取り入れる必要があります。この記事では、そもそもリテンションマーケティングとは一体何なのか。そしてリテンションマーケティングを成功させるための6つのポイントと、それを活かせる業界の事例も含めご紹介します。リテンションマーケティングとは?マーケティングのアプローチは大きく分けてアクイジション(新規顧客の開拓)とリテンション(既存の顧客維持)の2つがあります。リテンション(Retention)とは、日本語で「保持」「維持」といった意味を持ちます。継続的に自社と繋がって大きな利益をもたらしてくれるよう、各企業が注力しています。その既存顧客との関係維持をリテンションマーケティングと呼びます。例えば、イベントへの招待やメールマガジン配信、SNSでの情報発信などによる継続的な情報提供もその1つです。こうした働きかけをすることで、「商品やサービス内容がお客様に忘れ去られてしまう」「興味が競合他社に移ってしまう」といった顧客離れを防いで、自社のブランドに対する継続的な興味をもってもらうことを目的とします。アクイジションとの違いは?アクイジションとは新規顧客の獲得のことです。キャンペーンや広告などを通してゼロから自社の商品・サービスを知ってもらい、その企業にとっての価値を理解してもらうことが重要です。一方リテンションは、上記で述べた通り既存顧客との関係性を維持することです。既存顧客へのフォローやアフターサービスを提供して維持に努めます。リテンションマーケティングにおける「1:5の法則」とは?「1:5の法則」とは新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍かかるというマーケティング法則です。<新規顧客獲得には、新規開拓の営業・キャンペーン値引き・宣伝広告などのコスト(人・物・時間・お金)が多くかかります。一方リテンションマーケティングでは既存顧客への戦略のみで大きな利益を期待できます。より少ないコストで安定した経営の実現のためには「既存顧客が他社へ流れてしまう確立を下げる」「既存顧客からの追加売上の向上」が重要になります。リテンションマーケティングを成功させるポイント6つ現在の日本市場は、より個々のニーズに合った商品やサービスが求められています。限られた顧客を競合他社と奪い合うなかで、いかに優良顧客を確保し維持するかが大きな課題となります。ここでは、企業の売上目標達成のために重要なリテンションマーケティングを成功させるポイントを6つまとめました。成功させるポイント1:顧客を把握する1つ目のポイントは、顧客を把握することです。まず顧客把握のために同じニーズ・属性を持つ顧客のグループ分けして明確にします。これを顧客セグメントと言います。なぜこの顧客セグメントが必要なのかというと、セグメントされたマーケティングを展開することで、それぞれのセグメントごとに「これはあなたが求めている商品・サービスです」と核心をついたアプローチを可能にするからです。セグメントされたグループのなかで、特に重要なのは優良顧客です。優良顧客をリテンションすることは予算売達成のためにも有効的な手段になるので、特に手厚くフォローする必要があります。成功させるポイント2:LTVを高める2つ目のポイントはLTVを高めることです。LTVとは「Life Time Value」の略で、顧客生涯価値を意味します。顧客が取引を開始してから終了するまでの期間に、自社に対してどれだけの利益をもたらしたか、収益の総額を算出するための指標です。LTVは「購買単価×購買頻度×契約継続期間」で計算しますが、顧客に自社の商品・サービスの価値を感じてもらえれば、おのずと契約継続期間は長くなります。なので、自社のブランド力を強化することは顧客の企業への愛着度を増幅させ、結果リテンションにつながります。また、さまざまな戦略を講じて、購買単価と購買頻度の向上を図ることも重要です。成功させるポイント3:休眠顧客を洗い出す3つ目のポイントは休眠顧客を洗い出すことです。休眠顧客とは、一度は自社の商品やサービスを購入してくれたのに、その後一定以上の期間購入がない顧客のことです。顧客の休眠状態が長ければ長いほど、離反する可能性が高くなってしまうので、早めに休眠顧客のセグメントすることをオススメします。「休眠状態になった原因」「休眠期間」「休眠までの利用状況」を整理して、復活の見込みのある顧客を見極めましょう。成功させるポイント4:既存顧客の声をフィードバックする4つ目のポイントは既存顧客の声をフィードバックすることです。ただ一方的に企業の新商品の情報やお知らせを配信しているだけでは顧客は離れていってしまうので、既存製品やサービス改良のヒントを既存顧客の声から得て、より顧客に寄り添った商品・サービスを提供できるようにしましょう。また、フィードバックするうえで重要なことは、フィードバックの内容を部署にかかわらず企業全体で把握することです。社内の認識が統一され、従業員のモチベーション維持にも期待できます。さらに新たなビジネス展開をする際、優先順位の判断材料にもなるでしょう。成功させるポイント5:5W1Hを明確にする5つ目のポイントは5W1Hを明確にすることです。何を明確化するのかというと、セグメントされた既存顧客に対してそれぞれどのようなフォローアップ・アクションプランをするのかといった内容です。いつ・どこで・誰が・何を・どういった手段で(5W1H)行うのかを各セグメント別に明確にして共有しましょう。統一したフレームワークで動けることを可能にし、顧客満足度の向上に役立ちます。成功させるポイント6:ビックデータを活用する最後のポイントはビックデータを活用することです。ビックデータとは単に大量のデータのことを指すのではなく、さまざまな形・性格・種類をもったデータのことを言います。ビックデータは3つのV、データ量(Volume)・データの種類(Variety)・データの発生頻度または更新頻度(Velocity)から成り立っており、いずれも重要な要素になります。このビックデータを分析、活用することでアプローチに有用性のある知見を得たり、新たな商品・サービスを産み出す可能性が高いです。そして顧客の好みや行動パターンに合わせてその顧客に最適な商品・サービスを提供できるので、関係強化につながります。リテンションマーケティングを活かせるツールリテンションマーケティングを実施するには顧客の情報収集と管理が必須となります。現在は便利機能を持ったツールも普及してきているので、効率的にリテンションマーケティングを行うためにも、上手くツールを利用していきましょう。アプリアプリを活用したリテンションには「顧客側がインストールしてお店の情報を発信する」「企業側がインストールして顧客管理する」2つの側面があります。前者はユーザーの利用状況が顧客管理機能と連携しているのが大きな特徴で、それぞれの顧客に適したタイミングで的確な情報を届けることができます。一方、後者は社外へ営業をかける必要のある企業に重宝されています。近年はスマートフォン、iPadなどのデバイスにインストールして携帯できるアプリが開発され利用されています。クラウドサービスによって顧客情報を全体的に共有することも可能です。MAMAとはマーケティングオートメーションのことで顧客開拓におけるマーケティング活動を可視化・自動化するツールのことを言います。顧客の購入履歴や閲覧ページなどの行動、性別、年齢などの属性から個人を自動的に分類し、個々に合った最適な情報を最適なタイミング、最適な方法で提供する手助けをしてくれます。多くの情報をSNSなどで簡単に入手できるようになった現代において、顧客が多くの商品・サービスを慎重に比較検討できるようになったからこそ、自社の商品・サービスに魅力を感じて購入につなげられるように、積極的に顧客に働きかける必要があります。リテンションマーケティングを活用している業界4つリテンションマーケティングについて説明してきましたが、実際の店舗や企業ではどのように活用しているのでしょうか。ここでは成功事例を交えて4つの業界をご紹介します。活用している業界1:家具業界家具やインテリア雑貨を販売するIKEAでは、限定された顧客にロイヤリティプログラムで特別な体験をプレゼントする施策を行いました。IKEA FAMILYメンバーを実店舗に招待する「お泊り会」は不定期に世界的に行われていますが、最近ですと日本では2017年に横浜の港北で開催されました。店舗にお泊りできる特殊な体験に加えて、ナイトツアーやゲーム、IKEAの美味しい食事をいただけたりと、魅力的な内容なだけに大変人気があります。こうした特別で面白いイベントは既存顧客だけにとどまらず、新規顧客に関心も引くので企業に対する注目度も高まるでしょう。活用している業界2:セレクトショップある衣料品のセレクトショップの活用事例ですが、接客をした時の会話から得た情報をリテンションマーケティングのツールに書き込んでいます。他の従業員と情報を共有できるので、たとえ顧客の担当者が不在でも対応できるようにしています。顧客の詳細を把握することで、いつでも顧客の必要や好みに合わせたコーディネートの提案を可能にしました。活用している業界3:ネット通販業界ネット通販業界の場合は、よりいっそうリテンションマーケティングの良さが際立ちます。なぜなら顧客が購入した商品のみならず、どの商品をどれくらいの時間をかけて閲覧したか、またどのくらいの割合で購入に至ったのかまで把握ができるからです。ファッションブランドを幅広く取り扱うZOZO TOWNを経営するスタートトゥデイ社は、得た顧客情報をもとに購入した商品に合うアイテムを紹介したり、お手入れ方法を情報提供したりしました。その結果、クリックから購入にいたった割合を示すコンバージョンレート(CVR)が10倍まで引きあがったそうです。活用している業界4:ホテル業界ホテル業界においても、他の業界と同じくリテンションマーケティングが活用されています。顧客の情報を記録し共有しておけば、その顧客に合った最適なサービスを提供できるからです。食事を提供する旅館・ホテルの場合、顧客の好みや健康状態に合ったものを提供できれば大きなセールスポイントとなります。全国でリゾート開発・ホテルなどの運営を行っている株式会社星野リゾートでは既存顧客のデータについて詳細に分析を行い、随時施策を練っています。例えば「部屋のCDを増やして欲しい」といった希望も、個々に検討しているそうです。個々への取り組みが全体へつながる考えのもと取り組んでいます。リテンションマーケティングを活用し顧客との関連性を強化しようリテンションマーケティングを活用している企業はいずれの業界も共通して、より顧客に寄り添った施策を行っています。それぞれの顧客に対して施策を考えるのは手間も多いですが、それを行う価値はとても高いと言えます。2016年1月より活動を開始している日本リテンションマーケティング協会も国内市場の変化に伴い、長期的な企業と顧客の関係性構築はますます重要性を高めると考えています。現在はアプリやクラウドサービスの向上によって情報の管理も便利になっているので、既存顧客との関連性を強化するためにも、何らかの施策をこうじて競合他社との差をつけていく必要があるでしょう。弊社Start-Xは総合的なマーケティング支援を得意としております。他のマーケティング支援会社と比較すると、コストパフォーマンス高く支援可能なメニューが多くございますので、何かお困りごとがございましたらお気軽にお問合せください。ご相談はいつでもオンラインで無料でご対応可能です。