「マーケティング3.0」という言葉を聞いたことがありますか?これはマーケティングの神様と言われるフィリップ・コトラーが提唱した概念であり、マーケターや広告関係者の間でトレンド・ワードとなっています。しかし「マーケティング3.0」という言葉自体は知っていてもそれを他人に説明できる人は少ないのではないでしょうか。この記事では、コトラーが提唱するマーケティング概念について、マーケティング3.0を中心にご紹介しております。時代背景に合わせたマーケティング1.0~4.0に至るまでの流れに加え、企業活動へのマーケティング3.0の導入事例も掲載しておりますので、ぜひ日々のマーケティング活動の参考にしてみてください。マーケティング3.0とは?マーケティング3.0とは、2010年に出版されたフィリップ・コトラーの書籍の中で提唱されているマーケティング活動に関する概念です。ソーシャルメディアの台頭や市場の成熟などを背景に、消費者は優れた製品の機能のみでは満足せず、世の中をより良くするための社会的な価値に対して初めて共感を覚えることが説明されています。フィリップ・コトラーとは?コトラーは、アメリカ合衆国の経営学者です。本記事のテーマであるマーケティング概念をはじめ、マーケティングの6P・7P・STPといった理論の提唱も彼の大きな功績の一つです。時代の移り変わりと共にマーケティングも変化することを分かり易く説明する様などから「近代マーケティングの父」と評され、マーケティングに関する多くの著作を世に生み出しています。マーケティング3.0までの3つの時代の流れコトラーの提唱するマーケティング概念を紐解くと、製品中心のマーケティング1.0、消費者中心のマーケティング2.0、そして価値中心のマーケティング3.0というその時代に沿ったマーケティング概念が提唱されて来た流れがあります。ここではマーケティング3.0に至るまでの3つの時代の流れをご説明するとともに、いかにしてその時代ごとに合わせたマーケティング概念が形成されていったかをご紹介致します。時代の流れ1:マーケティング1.0マーケティング1.0は、「マーケティング」という言葉が誕生したといわれる、1900年~1960年代のマーケティング概念のことを指します。当時はまだモノが少なかった時代ですので、とにかく「安く大量に生産すればモノが売れる」という考え方が浸透していました。マーケティング1.0が製品中心のマーケティング概念と呼ばれる所以はここにあります。時代の流れ2:マーケティング2.01970年~1980年代は、技術の進歩と共に安く良い製品を簡単に作ることが可能となりました。この変化に伴い、市場には同じような製品が大量に出回るようになり、熾烈な価格競争が巻き起こることとなりました。こうなると「ただ安く大量に作れば売れる」時代は終わりを告げ、消費者ニーズを捉えたマーケティングが必要となりました。この消費者志向の考え方がマーケティング2.0です。時代の流れ3:マーケティング3.01990年~2000年代がマーケティング3.0の舞台となります。マーケティング2.0からの流れである消費者ニーズをめぐる企業間競争がより熾烈となり、市場に製品(モノ)が溢れ、市場の成熟化が進んで行きました。これにより、製品(モノ)自体の価値が低くなり、企業と消費者とが社会をより良くするための新たな価値を共創する流れが生まれました。この価値共創の考え方がマーケティング3.0の中心にあります。マーケティング3.0で重要な3iモデルとは?マーケティング3.0をより深く理解するために重要な、3iモデルについてご紹介致します。identity・image・integrityの頭文字から「3iモデル」と名付けられています。マーケティング3.0では、ブランド・ポジショニング・差別化という3要素のバランスが重要視されており、これからご紹介する3つの「i(アイ)」から企業を評価するフレームワークが3iモデルです。3iモデル1:identity1つ目の「i(アイ)」は、brand identity(ブランドアイデンティティ)です。先述した3要素のうち、「ブランド」と「ポジショニング」から構成されており、消費者に対してブランドのポジショニングを明確にすることを指しています。どのような立ち位置を獲得するかは、企業の戦略や商品の方向性に大きな影響を与えます。ただ良い製品を作れば良いのではない、という理由はこういった部分にも表れています。3iモデル2:image2つ目のiは、brand image(ブランドイメージ)です。意味は文字通りブランドのイメージですが、「ブランド」と「差別化」によって構成され、単なる製品の機能面でのニーズを超えた消費者の感情的な満足を得ることを目的としています。コトラーは、消費者の感情的な満足をスピリチュアルという言葉で表現しており、心が揺さぶられるような体験を通じて消費者満足を得ることが重要だと説明しています。3iモデル3:integrity3つ目のiは、brand integrity(ブランドインテグリティ)です。「ポジショニング」と「差別化」により構成され、ブランドの誠実さをもって、消費者の信頼を獲得することが意図されています。企業やブランドが誠実な対応を通じて約束を果たすことで、消費者は真のファンとなります。具体的にどのような対応が消費者を惹きつけるかは、後述する企業の導入事例をご参考下さい。マーケティング3.0の導入事例4つでは、具体的にマーケティング3.0の考え方を企業活動に導入した場合について、ユニクロ・Apple・キリンホールディングス・マザーハウスという4社の成功事例をもとに解説させて頂きます。いずれもマーケティング3.0で重視されている、企業の社会的価値や消費者との価値共創が意識された事例となりますので、それぞれの企業の考え方を中心にご参考下さい。マーケティング3.0の導入事例1:株式会社ユニクロユニクロでは、CSR活動を通じてマーケティング3.0が体現されています。同社では、海外の製造工場で働く従業員に収益の一部を用いて教育的支援などを行う「Factory Worker Empowerment Project」が実践されています。こうした活動を通じて、世の中をより良くする企業というブランドのイメージを消費者に強くアピールした成功事例と言えるでしょう。Factory Worker Empowerment Projecthttps://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/people/production/マーケティング3.0の導入事例2:Apple Inc.携帯メーカー各社がどんな製品(機能)が求められているかを研究し改良を重ねる一方で、Appleが発表したiphoneは、消費者の暮らしや生活スタイルをより良いものに変革することが目的とされていました。Appleの事例は、製品自体の機能に留まらず、消費者がより良い暮らし(社会)に求める価値を創造したという点で評価すべきものです。マーケティング3.0の導入事例3:キリンホールディングス株式会社キリンホールディングスは、同社のヒット商品である「午後の紅茶」の原材料(紅茶葉)産出国であるスリランカに対して、継続的な原料資源確保のための支援を行っています。スリランカの紅茶農園の環境保全及び労働環境の改善など持続可能な紅茶農園の運営を支援することで、消費者に対して高品質な商品を提供し続けるという価値創出が可能になっています。キリン スリランカフレンドシッププロジェクトhttps://www.kirin.co.jp/csv/connection/srilanka/マーケティング3.0の導入事例4:株式会社マザーハウスマザーハウスは、発展途上国でアパレル事業を展開するというユニークな企業です。発展途上国の資源を用いた製品の販売を通じて、その国の発展に貢献しています。消費者はマザーハウスの製品を購入することで、同社が推進する発展途上国への支援を共に推進することができ、まさに世の中をより良いものにする価値共創を体現している好事例と言えます。マーケティング3.0に続くマーケティング4.0とは?世の中をどう良くするかという社会的価値を踏まえた製品やサービスの成熟をもって、マーケティング4.0という新たな概念が登場します。マーケティング4.0では、発達した製品・サービス・技術をもって、消費者の自己実現を果たせるかどうかという観点が重視されています。自己実現という考え方はマズローの欲求段階説でも有名ですが、「消費者のありたい姿をどう叶えるか」ということがマーケティング4.0では求められています。マーケティング3.0を導入しようマーケティング概念は、時代の流れと共に進化を遂げてきました。マーケティング3.0についても、そこに至るまでの背景を含めご理解頂くことで、その価値に気付いて頂きやすくなるかと思います。具体的にどのようにその考え方を活かせば良いかについても、ご紹介した導入事例も参考にして頂き、マーケティング3.0の実践にお役立て頂ければ幸いです。弊社Start-Xは総合的なマーケティング支援を得意としております。他のマーケティング支援会社と比較すると、コストパフォーマンス高く支援可能なメニューが多くございますので、何かお困りごとがございましたらお気軽にお問合せください。ご相談はいつでもオンラインで無料でご対応可能です。