コロナ禍によるオンラインでの集客施策に注目が集まるなか、自社でもコンテンツマーケティングに本格的に取り組みたいと考える企業も多いのではないでしょうか。コンテンツマーケティングは、他の施策と比較して成果を獲得するために時間がかかりやすく、中長期的なマーケティング戦略として実行する必要があります。そのため、施策を試したいと考えていても、なかなか上層部の理解を得られないといったケースも少なくありません。そんな時に参考にして欲しいのが、他社の成功事例です。自社と同じ業界や似たような課題を抱えている企業の成功事例を読み解くことによって、成功への糸口を見つけ出すことや、周囲を説得する材料を得ることができます。本記事で、BtoC / BtoBに分けて、代表的なコンテンツマーケティングの成功事例を背景や施策の特徴を交えて詳しく解説していきます。【関連記事】▶︎BtoBコンテンツマーケティングの基礎知識|成功のポイントや実践の手順を徹底解説▶︎プロが教える!コンテンツマーケティングに本当に強いおすすめの会社10選|失敗しない選び方を解説【BtoC】コンテンツマーケティングの成功事例:5選ECサイトとオウンドメディアを一体化することで、ブランド作りに成功|北欧、暮らしの道具店(ECサイト)出典:北欧、暮らしの道具店メディア名北欧、暮らしの道具店運営会社株式会社クラシコム目的ECサイトの売上向上戦略ECサイトとメディアを一体化させ、完成度の高い「読みもの」を通して、ユーザーをリピート化させる「北欧、暮らしの道具店」は、株式会社クラシコムが運営するECサイトです。サイト内では、読みものとお買いものに分かれており、ECサイトとオウンドメディアが一体になっているのが特徴です。トップページを見ると分かるように、いわゆるECサイトというデザインではなく、ナチュラルで雑誌のような雰囲気を演出しています。検索やSNSからサイトに流入したユーザーに対して押し売りをするのではなく、商品の温度感をしっかりと伝えることで「北欧、暮らしの道具店」のファン化を促すような設計がなされています。その結果、差別化の難しいECサイトにおいて月間約1500万PV / 170万UUを達成(※2019年時点)。その内、ユーザーの96%が「週1回以上」サイトを訪問しており、72%が毎日見ているという驚異的な成果をあげています。質の高いブランディングを通じて、一度購入したら終わりではなく、日常的にユーザーが訪れるECサイトにすることで、高いLTV(顧客生涯価値)を高めているコンテンツマーケティングの好例と言えるでしょう。参考:「北欧、暮らしの道具店」のメディア戦略を支える3要素 | クラシコム本格運用開始からわずか2年で数億円の受注を生み出すオウンドメディアへと成長|レイビー(不動産)出典:レイビー | 不動産投資を初心者がゼロから理解できる安心ナビメディア名レイビー運営会社株式会社グローバル・リンク・マネジメント目的新規リードの獲得戦略コンテンツSEO施策を通じて、不動産投資にまつわるキーワードで検索するユーザーの流入を伸ばし、リード獲得へとつなげるレイビーは、「不動産投資初心者がゼロから理解できる安心ナビ」をコンセプトに、株式会社グローバル・リンク・マネジメントが運営するオウンドメディアです。当社は、かつてはWeb広告やオフラインでの説明会などを通じて新規顧客の開拓を行っていましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、インバウンドマーケティング施策としてオウンドメディアの強化を実施しました。コンテンツは、不動産投資に興味があるターゲットに対して、基本的な知識から投資用物件の選び方・不動産会社の選び方など、不動産投資に詳しくはないが、いずれ始めてみたいと考えているユーザーに向けた内容になっています。戦略としては、SEOでの流入を軸としたコンテンツ作りとなっており、不動産投資にまつわるキーワードでのコンテンツ作りを実施。お問い合わせへの動線をコンテンツ内に設けることで、リード獲得へち繋げています。実際に「不動産投資」「不労所得」「金融資産」といったビックキーワードで上位表示を達成しています。当メディアは2019年に本格的な運用を開始しましたが、わずか2年でオウンドメディア経由の受注数が社内のWeb施策で1位になり、数億円の受注を生み出す施策へと成長しました。作り手を見せることで長く愛用してくれるブランドのファンを育成|土屋鞄製造所出典:土屋鞄製造所 — 上質な革で仕立てる、日本製の鞄メディア名土屋鞄製造所SNS運営会社株式会社グローバル・リンク・マネジメント目的ファンの育成戦略SNSを通じてブランドの価値観に共感してもらい優良顧客を育成する土屋鞄製造所は、1965年に創業した日本国内の革製品メーカーです。当社では2005年と比較的早い段階でECサイトを立ち上げ、FacebookやInstagramなどで情報発信を行なっています。出典:土屋鞄製造所(@tsuchiya_kaban) • Instagram写真と動画当社SNSでは、ブランドに共感してくれるファンを作っていくために、自社の職人にフォーカスを当てた投稿を積極的に発信しています。職人の技術や素材のこだわりをユーザーに伝えることによって、ブランドへの愛着を高めています。YouTubeチャンネルを新たに開設し、ECサイトへの送客に成功|インテリア系ECサイトメディア名非公開運営会社非公開目的ECサイトへの送客数アップ戦略テキストや写真だけでは分かりにくインテリアを動画を通して伝えることによって、ユーザーの購入意欲を高めECサイトへの送客を増やすインテリア系のECサイトを運営するA社では、売上は堅調に伸びていたものの、目標とする数値には届かないという課題を抱えていました。また、リスティング広告やSNS広告の施策を運用し新規顧客を開拓しているが、CPAが高騰化し費用対効果が合わないといった背景も同時にありました。そこで、新たなマーケティング施策としてYouTubeを活用したコンテンツマーケティングの実施を決定。弊社がパートナーとなり、施策の全体設計や実際のチャンネル開設〜運用を行いました。制作した動画は、YouTubeで配信するだけではなく、「実店舗のディスプレイでも配信する」「メルマガやLINEで配信する」「ECサイト内へ埋め込む」など積極的に二次利用することで、有効活用を行いました。結果的にYouTubeチャンネルからのECサイトへの流入が増加し、月商500%アップを達成しました。▶︎当事例についてより詳しく知りたい方は、「YouTubeを活用したマーケティングで、インテリア系ECの月商が500%アップ」を参考にしてください。自動車の作り手をあえて前面に見せることで顧客の興味や関心を高めることに成功|トヨタイムズ(自動車メーカー)出典:トヨタイムズメディア名トヨタイムズ運営会社トヨタ自動車目的メーカー全体のブランディング戦略クロスメディア戦略の一つとしてオウンドメディアを運用。作り手の思いや現場をありのまま伝えることでユーザーの興味や関心を高めるトヨタイムズは、トヨタ自動車が2019年から運用しているオウンドメディアです。コンテンツの最大の特徴は、「社内報」のような社内に発信する情報をあえて外に向けて発信していることです。そのため、コンテンツ内に車種の概要や購入への導線が用意されているわけではなく、トヨタという会社がどのような挑戦をしているのか、エンジニアがどのような思いで車を設計しているのかといったストーリーベースの内容になっています。出典:トヨタのデザインが大胆になった?外形デザイナーに真相直撃またトヨタは、オウンドメディアだけでなくYouTubeチャンネルやテレビCMなど、複数のプラットフォームを活用したクロスメディアのマーケティングを実施しています。それぞれの媒体の特徴を活かして、媒体に適したコンテンツや伝え方を行うことで、今までリーチできなかった顧客層の興味や関心を高めることに成功しています。【BtoB】コンテンツマーケティングの成功事例:5選ナレッジ記事と企画記事を戦略的に作り分けし、さまざまな層にアプローチ|LIGブログ(システム開発・WEB制作)出典:Blog Top | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作メディア名LIGブログ運営会社株式会社LIG目的新規リード獲得と認知度拡大戦略SEOやSNS・直接的な指名検索と、コンテンツによって想定される流入経路をしっかりと棲み分け、目的に応じたコンテンツ制作を実施株式会社LIG(リグ)は、Webサイトの制作事業やシステム・アプリ開発、マーケティング支援などを手掛けるIT企業です。そんなLIGが2006年から運用するオウンドメディアがLIGブログです。オウンドメディアとしては、運用の開始が比較的早く、成功事例として業界では認知度の高いサイトとなっています。当メディアは、自社の社員や専属のライターが、Webマーケティングや開発事業にまつわるさまざまなナレッジや知見を発信するとともに、くすりと笑ってしまうような「企画記事」を公開しているのが特徴です。ナレッジや知見に関する記事では、SEO対策がなされており、課題や悩みが顕在化しているユーザーに対して的確にアンサーを提供しています。また企画記事では、SNSでのバズや拡散を狙った記事が多く、これまでLIGを知らなかったユーザー層へアプローチできる設計となっています。LIGブログでは、月間300件のお問合せを獲得。自社の新規リードの約80%がLIGブログ経由となっており、新規リード獲得を目的としたコンテンツマーケティングの成功事例と言えるでしょう。ユーザーが資料請求することによって収益化を達成するモデルを確立|BOXILマガジン(Webサービス)出典:BOXIL Magazine(ボクシル マガジン) - SaaS情報メディアメディア名BOXIL Magazine運営会社株式会社スマートキャンプ目的メディアの収益化戦略企業の担当者が検索するであろうツールやシステム関連のKWでコンテンツを豊富に制作し、資料請求を促すことによって収益化BOXIL Magazine(ボクシルマガジン)は、法人向けのクラウドサービスを比較し、資料請求ができるWebサイトです。人事・採用や法務、経理、営業・マーケティングとビジネスにまつわる多くのツールが紹介されており、業務の効率化や改善に悩む担当者をターゲットに、ツールの機能や価格・口コミが一覧で比較できる設計になっています。検索での流入を軸にメディアが設計されており、「勤怠管理システム」「経費精算システム」「人事評価システム」など、◯◯システムといったキーワードでの上位表示が目立ちます。社員のTwitterでの情報発信を促進し、お問合せの半数をSNSから獲得|株式会社ベイジ(システム開発・WEB制作)出典:東京のWeb制作会社・ホームページ制作会社 | 株式会社ベイジ | baigie Inc.メディア名knowledge / baigie、SNS運営会社株式会社ベイジ目的新規リードの獲得戦略オウンドメディアとSNSなど複数チャネルでユーザーにアプローチすることで、比較検討期間の長いBtoBマーケティングを攻略株式会社ベイジは、BtoB向けのWeb制作やデザイン、サイトの改善コンサルなどを手掛けるIT企業です。当社では、社員がナレッジや知見に関して発信するオウンドメディアを通じて集客を実現するとともに、社員のTwitterでのコンテンツ発信に力を入れています。結果的に月間500件近い問い合わせのうち、商談まで至った案件の約50〜60%程度が社員のSNSがきっかけとなっています。新しい価値をコンテンツを通じて発信することで自社の認知向上に貢献|サイボウズ式(グループウェア開発事業)出典:サイボウズ式 | 新しい価値を生み出すチームのメディアサイボウズ式は、2012年に「新しい価値を生み出すチームのためのコラボレーションとITの情報サイト」として株式会社サイボウズが立ち上げたオウンドメディアです。サイボウズは2011年まで新聞広告や雑誌広告・メルマガなどでマーケティングを展開していましたが、新規顧客開拓が頭打ちになっているという課題を抱えていました。そこでBtoBコンテンツマーケティング施策としてオウンドメディアを立ち上げを決定しました。サイボウズは、クラウドベースのグループウェアや業務改善サービスを提供する会社ですが、メディアであるサイボウズ式には、自社の製品についてほとんど触れていないのが特徴です。売上の向上を目的としながらも、直接的に製品を売り込むのではなく、顧客となる企業のチームワークや業務・働き方に関する有益な情報をコンテンツで提供することによって、「サイボウズ」という企業名の認知度の向上や、ブランディングを行なっています。コンテンツSEOを軸に、月200件以上のリード獲得に成功しているオウンドメディア|パーソルホールディングス(人材派遣・紹介事業)出展:PERSOL(パーソル)グループ - はたらいて、笑おう。企業への人材派遣や紹介を行うパーソルホールディングスでは、Web広告やイベント出展からのリード獲得を中心にマーケティングを展開していましたが、2020年頃のコロナ禍以降にデジタルプロモーション強化の一環としてオウンドメディアの本格的な運用を開始しました。以前からオウンドメディア自体は運用されており、コンテンツ自体は大量にあったものの、流入したユーザーがお問合せや商談につながらないといった課題を抱えていました。そこで、オウンドメディアのリニューアルを実施し、コンテンツSEOを軸に「成果につながるコンテンツの制作」を強化しました。結果的にリニューアル実施からわずか1年でサイトへの流入数は約3倍となり、月200件以上を獲得するメディアへと成長を遂げました。戦略的にBtoBコンテンツマーケティングの設計〜施策を実行、運用を成功させている好例と言えるでしょう。成功するコンテンツマーケティングの3つの共通点ここまでBtoB、BtoCに分けてコンテンツマーケティングの華々しい成功事例について解説してきました。しかし、コンテンツマーケティングは始めれば必ず成果を出すものではなく、綿密な設計と我慢強い運用が必要不可欠なことを忘れてはいけません。ここからは、成功するコンテンツマーケティングの共通点について解説します。マーケティングの目的が明確であるオウンドメディアやSNSを活用したコンテンツマーケティングは、多くの企業にとって当たり前のものになっています。しかし、「競合他者がやっているから」「流行りの手法だから」といって予算を投下したところで、コンテンツマーケティングの本質を理解し、何のために時間と予算をかけるのかといった目的が明確でなければ成功に至ることはありません。実際のところ、Web広告やテレアポ・TVCMなどマーケティング施策は、他にもたくさんあります。他の施策ではなく、あえてコンテンツマーケティングを実施する理由、そしてコンテンツマーケティングを実施した結果、どのような課題を解決したいのかといった目的を明確に持つことが大切です。量ではなく、良質なコンテンツを作ることを大事にしているコンテンツマーケティングのよくある落とし穴に、日々の運用が想定していた以上に大変ということがあります。月やクウォーターでのKPIを追いながら、コンテンツを制作し、CTAやホワイトペーパーの改善を行うことは、容易いことではありません。そのため、ただコンテンツを出すことが目的になってしまうケースがあります。しかし、コンテンツマーケティングは、コンテンツを介在にしたユーザーと企業のコミュニケーションに過ぎません。そのため質の低いコンテンツで、ユーザーの興味や関心を高め、サービスや商材の購入・導入に結びつけることはできません。コンテンツの数は大事ではないとは言いませんが、自信を持って自社のコンテンツと言えるものでなければ公開する意味はないでしょう。作って終わりではなく数値をもとに改善を続ける良質なコンテンツを作ることにもつながりますが、コンテンツは作って終わりではなく、Googleアナリティクスや検索順位のチェックツール・ヒートマップなどを活用し、「どのように読まれているのか」を分析するようにしましょう。これらの分析ツールには、コンテンツをよりよくするヒントが多く隠されています。例えば、検索順位ツールを追うことで、特定のキーワードで検索するユーザーに対してGoogleが何番目におすすめのコンテンツと評価しているのかを判断することができます。当然、SEOをタッチポイントとするのであれば、狙っているキーワードで1位が獲得できるまでコンテンツのリライトを積み重ねる必要があります。コンテンツマーケティングの成功事例の裏側には綿密な設計がある本記事では、BtoBとBtoCに分けてコンテンツマーケティングの成功事例について紹介しました。ビジネスや業界を問わずコンテンツマーケティングに取り組みたいという企業は増えています。成功事例も多くありますが、その一方で取り組んだものの成功に至らず施策を辞めてしまったという企業も少なくありません。コンテンツマーケティングは始めれば必ず成功するものではなく、自社が抱えている課題はなんなのかコンテンツマーケティングによってどのように解決するのか誰に向けてなんのコンテンツを発信するのかどのような流入経路でコンテンツをユーザーに届けるのかコンテンツによって、どのように売上促進に繋げるのか設定した成果をどのように計測するのかなど、マーケティングとして成立させるための設計が欠かせません。弊社では、BtoBコンテンツマーケティングの企画や設計・実際の運用のご支援も行っています。無料のオンライン相談を実施していますので、BtoBコンテンツマーケティングに課題を抱えている企業様がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。