ブランド論がいま注目されています。過去さまざまなブランドが現れてきた中で、強いパワーを発揮し続けているブランドは、どのようにその価値を社会に表明し、創造を行ってきたのでしょうか。今回の記事ではブランド価値創造について、解説していきますので興味のある方は参考にしてみてください。ブランド価値とは?コロナ禍の影響で、消費を取り巻く状況は大きく変化しています。外出の規制や自粛に伴い購買のスタイルが変わり、購入する商品やサービスの内容、優先順位も以前とは様変わりしました。2020年秋にはやや回復傾向にあるとはいえ、GDPなどの経済指標は例年に比較すると依然低い状況です。そのなかで「ブランド価値」に関する企業の関心が急速に高まっています。ブランド価値とは1994年に邦訳されたD.アーカーの「ブランド・エクイティ戦略」で一躍注目、定着した概念です。コカ・コーラ、シャネル、ナイキ、スターバックスなど名前を聞いただけで企業や商品のイメージが想起でき、「このブランドなら」と消費者から確実に選ばれる理由を持つもの、そうしたブランドは高い価値を持っています。これは、BtoBの場合でも同様です。強力なブランドは、購入者に満足を与え、企業に継続的な利益をもたらし、その意味で資産=価値と捉えることが可能です。高級だけがブランド価値ではないブランドというと、エルメスやフェンディ、ティファニーのように世界的に有名なラグジュアリーブランドを指した時代がありました。品質や値段が高いことはブランド価値を形成する一部ではありますが、必ずしも必要な条件ではありません。例えば2000年頃から市場で存在感を高めていったユニクロは、高級ブランドとは一線を画しています。過飾を排したコーディネート素材としてのベーシック衣料を、リーズナブルな価格で提供することをコンセプトに、確固たるブランド価値を築きました。逆に、高級であってもその存在が誰にも知られず、市場においてほとんど評価されない場合は、ブランドとしての価値は高くないと言えます。ブランド名=ブランド価値とは必ずしも言えないファッションアパレルの例を挙げましたが、必ずしもブランド名がそのままブランド価値を表すとは言えません。ブランド名は、そこから想起・連想されるイメージ、すなわち商品サービスの品質や店舗、パッケージ等のビジュアル、接客スタイル、顧客像、使用シーン、商標や歴史等の「のれん」といったさまざまな要素群と結びついて、初めて価値を形成します。その結果、ブランド名やブランドロゴが価値の象徴として、力を発揮します。ブランド価値を創造するためのポイント5つブランドは計画性をもってコントロールし、しっかりその価値を創造していかなければなりません。また、小手先のテクニックのみで一朝一夕に出来るものではありません。そのためにやるべきこと、考えるべきことは非常にたくさんあります。多くの研究者が大著によって具体的な戦略を世に問うていますが、ここでは意識すべき基本的なポイントを5つに絞って説明していきます。ブランド価値創造のポイント1:商品のペルソナ設定をしっかりと行うブランド創造に携わる人なら、ペルソナという言葉を耳にしたことがあるでしょう。対象社会や消費者から、望ましいイメージと共に想起されることをブランドが目指すのだとしたら、ペルソナはそのブランドイメージと強く結びつく、理想の消費者像を表します。いわゆるブランドターゲットよりもさらに詳細な設定や性格付けを行って、そのペルソナが商品やサービスにどのような期待感を持つのかを想定しながら、ブランドの世界観を創りこんでいきます。スープを主力メニューに据えたある飲食チェーンが導入したペルソナは、個人としての名前まで備えた具体的な事例として有名です。シンボリックユーザーであるペルソナを設定することで、ブランド創造に関わるあらゆる人々のベクトルを、ブレることなく導くことが可能です。ペルソナ設定とは?より具体的な形で消費者の像を認識するために、ペルソナ設定ではデモグラフィック要因とライフスタイル要因の2軸を意識しましょう。デモグラフィック要因としては、年齢や性別、居住地、職業、家族構成などの属性を明確にし、ライフスタイル要因としては、ファッションのタイプや休日の過ごし方、好きな音楽などの趣味嗜好や価値観、ライフステージに関わる属性を定めます。そしてSTP分析などのフレームを通じて得られたブランドの概要に対し、例えば消費者グループインタビューや関係者のファシリテーション等の定性情報を通じて、ペルソナがどのような感性や感情で共感を示していくのか、ストーリーを明確にしていきます。ブランド価値創造のポイント2:商品そのものに価値があるブランドの価値構造を説明する用語として「機能的価値」「情緒的価値」、最近では「社会的価値」という言葉がよく用いられます。まず商品やサービスそのものが有意的な機能を持ち、それに消費者のマインドに訴求する情緒的な価値が付与され、さらに環境保全や人権配慮などの社会貢献性に関する価値が考慮される、とする考え方です。これらはマトリョーシカのように重層構造になっています。プロダクトブランドの場合では中核をなす商品・サービスが、コーポレートブランドであれば企業の事業そのものに有意性がなければ、いくら付加価値をつけても砂上の楼閣です。実態のない企業が広告だけで客を集め破綻した例、実力の伴わない有名人が詐称で消えていった例、などは「偽りのブランド戦略」の例(良くない例)です。ブランド価値創造のポイント3:ブランドの価値観が明確であるブランドの「情緒的価値」「社会的価値」は、設定したペルソナの共感を得るうえで重要な要素となります。言い換えればそれは「価値観・世界観の共有」です。共有の度合いが強いほど、顧客から根強い支持=ロイヤリティを獲得します。そのためには、明確な価値観の表明と伝達が必要です。初期のアップルは革新的かつ先進的なプロダクトと洗練されたデザインで、多くの熱狂的なファンを集めました。無印良品も、品質に裏付けられたシンプルさとセンスの良さが世界的にも支持されています。一方、例えば大塚家具の経営陣をめぐる騒動はブランドの方向性を混乱させ、商品ラインや価格戦略にブレを生じさせました。揺るがぬ価値観の表明が、ブランドの確立には不可欠と言えます。ブランド価値創造のポイント4:ブランドへの期待値と商品の擦り合わせができているコカ・コーラの有名な失敗事例をご存じでしょうか。1985年、コカ・コーラ社は入念なマーケティングリサーチを重ね、創業以降初めてテイストを変更した主力商品を市場に投入しました。ところが、事前の味覚調査では高評価だったニューコークは、発売されるや否や大不評を浴び、署名が集まる等社会現象にまで発展しました。結局同社は数ヶ月で、元の商品をコカ・コーラ・クラシックとして再デビューさせたのです。コカ・コーラのユーザーは、長年親しんだ味に強い愛着を持っており、それが変わってしまうことなど望んではいませんでした。この出来事は、消費者が望む世界観を反映しない商品はブランドにとってマイナス要因となってしまうことを示す、強烈な例として記憶されています。ブランド価値創造のポイント5:ブランドの方向性と商品コンセプトが一致しているブランドの価値創造プロセスが表層的であった場合、その世界観に向かう方向性と商品のコンセプトが乖離してしまう危険性があります。開発した商品の特性と価格、プロモーション戦略(いわゆる4C、4P)がそれぞれの部署で独自に検討されれば、当然のことながらベクトルは同じ方向に向かいません。レクサスが1989年に北米でデビューする際、トヨタはメルセデスのような高級車としてレクサスを開発する一方、それまでのアメリカのカーディーラーでは考えられない特別な「顧客体験」の場として、販売店のあるべき姿を慎重にプログラムしました。「安い大衆車」という日本製乗用車イメージや「信頼のおけない取引の場」というディーラーのイメージを払拭し、商品のコンセプトとブランドの方向性を慎重にシンクロナイズさせてレクサスを成功に導いたのです。ブランド価値が高いとされる企業の4つの特徴ブランドと言われて名前やシンボルがすぐ頭に思い浮かぶような企業は、ブランド価値が高いとされているものです。ホテルならリッツカールトン、バッグであればルイヴィトンやハンティングワールド。時計ならタグホイヤーやロレックスといったところでしょうか。これらの企業ブランドにはいくつかの共通点があります。ここでは、それについて解説していきます。ブランド価値が高いとされる企業1:他社ブランドを否定しない広告戦略上で、ライバルとなる企業やその商品を比較の対象として登場させるケースが、洋の東西を問わずしばしば見受けられます。こうした手法は、比較相手のみならず発信者の品格をも貶めるものです。最近では、有名洋酒メーカーをヘイトめいた表現で名指し批判した通販企業が、社会から逆に批判されたケースが思い起こされます。本章の冒頭に掲げたような高価値ブランドは、他社を否定することがありません。自らの価値観に自信を持ち、そこを磨き上げることに心血を注いでいるので、競合を否定する理由も意味も持たないからです。消費者も社会も、こうした企業姿勢を敏感に感じ取り、彼らに優良ブランドとの称号を与えてくれます。ブランド価値が高いとされる企業2:自社ブランドを褒めすぎない同じように、自社ブランドに自信を持つ優良な企業は、必要以上に自らをほめそやす修飾表現を好みません。特に、日常的に自慢の多い人や企業を敬遠する傾向が強い日本では、逆効果をもたらす場合が多いからです。例えば90年代末期、ユニクロがワイデン&ケネディ社をパートナーに打ち出したマスメディア広告は、実に淡々としたものでした。過剰さを排し製品の特長をライフスタイルと共に著名・無名の人々が語るプロモーションは、我が国のアパレル市場に大きな存在感を示しました。ブランドの評価は提供する側ではなく、ユーザーの側が形成していくものと言えるでしょう。ブランド価値が高いとされる企業3:ニーズにしっかり応えている高級百貨店ノードストローム、そしてリッツカールトンなどの逸話としてよく引き合いに出される言葉があります。それは「お客さまは常に正しい」です。行き過ぎたクレーム対応が問題視されることもある現代では、やや昔話に近い印象がありますが、その精神はいまだ古びてはいません。この言葉が意味するところは、お客さまや社会が求めているニーズはどこにあるのかを見極め、応える態度がブランド創造に大きく貢献するということです。目の前に見えるニーズだけでなく、潜在的なニーズをあらゆる接点でつかむ態度が徹底しているため、上記のような老舗は競争の激しい業界で位置を保っています。ブランド価値が高いとされる企業4:自社の強みが明確であるマーケティングでよく用いられるフレームワークにSWOT戦略というものがあります。これは市場環境に対して自社の強みと弱みをどのように認識するかを明確にしていくツールです。ブランド価値が高い企業は、自社の強みを十分認識し、そのうえでさらに強化し、維持する策を常に展開しています。競合環境や今後変化していく市場の中で、何が自らの強みとしてパワーやプレゼンスを発揮し続けられるか、そこを明確にしなければブランドの価値は創造できません。新興や中小のブランドは、特にこの部分を強く意識すべきでしょう。ブランド価値が高い企業の特徴と、価値を高める方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。▶︎参考記事:ブランドの価値が高い企業の5つの特徴|ブランドの価値を高める方法ブランド価値を創造しよう!最初に述べたように、ブランドは簡単に創造できるものではありません。多くの価値あるブランドは、長い年月と手間をかけて注意深くプログラミングしてブランドを育成しています。これらの事例を参考に、ブランドの価値を創造していってください。弊社では、クリエイティブを活用した企業の認知拡大・ブランディングのご支援も行っております。多くの企業でブランディングや認知拡大に成功しています。ぜひ各種クリエイティブ活用したブランディングや認知拡大による売上増加を狙いたい企業様はお気軽にお問い合わせください。マーケティングを中心に、EC・D2Cのブランド成長、クリエイティブ制作、およびビジネスで役に立つ「フレームワーク集」等の資料を「個人情報入力不要」で無料で公開しております。