動画制作の際は、写り込むものや使用する音楽などの面で著作権を意識する必要が出てきます。オリジナルで制作したはずなのに、公開範囲が限定されていた動画を永続的に利用できず、公開中止に追い込まれてしまったといったトラブルに巻き込まれてしまうケースも少なくありません。また、意図せず動画に映り込んでしまった人物や建物の肖像権が問題になるケースもあります。最悪、損害賠償などに発展しかねない動画制作のリスクを回避するには、著作権・肖像権をしっかり理解しておくことが重要です。では、著作権や肖像権とは何でしょうか。具体的に知らない方も少なくありませんが、法律に関することなので無視・軽視はできません。今回の記事では、動画制作の置ける著作権の基礎と肖像権や音楽の使用法方法に関して解説しています。制作・公開の前に、ちゃんと学んでおきましょう。著作権とは?著作権とは、著作物を保護する目的を持つ権利です。この権利の存在により、著作物を作った人(著作者)の作品を他人が無断で使わないよう守ることができます。著作権は、作品が作られた時に生じます。作者の年齢や立場、作品の規模や知名度などは問いません。著作物となる作品を作った人全てが、自分の著作物に対する著作権を得ます。動画制作における肖像権とは?肖像権とは、肖像(人の顔や姿の絵・写真・彫刻など)に帰属する人権です。人格権と財産権に大別され、基本的にはプライバシー権の一部に位置付けられています。どんな相手にも発生する人権のため、家族・友人・社員など誰に対しても使用許諾が必要です。明確な許可を得られない相手の場合は、動画の使用を中止、またはモザイクなどで修正を入れる必要があります。動画制作における著作権の基礎知識4つ著作権を理解する上で重要な基礎知識には、著作物・著作隣接権・著作人格権・著作者があります。著作権がどのような意味を持つのかを知るために必要な用語でもあるため、それぞれの基礎知識が表していることを学んでおきましょう。著作権の基礎知識1:著作物著作物とは、言語・音楽・舞踊・無言劇・美術・建築・地図・図形・映画・写真・プログラムなどの中で、個人の思想や感情を創造的に表現したものです。上記の他、二次元・編集・データベースの著作物も含みます。また、例外もあります。憲法・法令・国や地方公共団体または独立行政法人の告示や通達など・裁判所の判決や命令などの翻訳物や編集物で、国や地方公共団体や独立行政法人が作成したものは著作物でも著作権を有しません。動画の著作物例動画の著作物にあたるものには、ネット配信動画・ゲームソフト・ビデオソフト・テレビドラマ・コマーシャルフィルム・劇場用映画などがあります。自身が制作した動画は自分の著作物になりますが、その中に他人の著作物を使用する場合にはその著作者から使用許諾を得なければいけません。著作権の基礎知識2:著作隣接権著作隣接権とは、著作者ではないが著作物の伝達に重要な役割を果たす者に認められる権利のことです。重要な役割を果たす者というのは、主に実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者のことです。権利には、いくつかの種類があります。具体的には、録音権と録画権・放送権と有線放送権・送信可能化権・譲渡権・貸与権・放送の二次使用料を受ける権利・貸レコードについて報酬を受ける権利が著作隣接権に含まれています。著作権の基礎知識3:著作人格権著作人格権とは、著作権における人格的側面を保護する権利の総称です。著作権には、財産的側面と人格的側面が存在します。そのうちの人格的側面を保護する著作人格権は、公表権・氏名表示権・同一性保持権を包含しています。著作人格権は人格に基づく権利のため、譲渡や相続はできません(一身専属的権利)。人格に基づく権利なので基本的には人格を持つ人間個人の権利ですが、職務著作の場合は法人にも著作人格権が認められます。著作権の基礎知識4:著作者著作者とは、著作物を創作した者のことです。複数人が共同で創作した著作物については、創作に寄与した者全員がその著作物の著作者になります。また、法人著作(職務著作)の場合は条件を満たせば法人などが著作者になります。その主な条件は4つ、法人などの発意に基づき作成されたもの・法人などの業務の従事者が作成したもの・法人などの従事者が職務症作成するもの・法人内部の契約や勤務規則などに別段の定めがないことです。動画作成における著作権のポイント5つ動画制作で押さえておきたいポイントは5つ、音楽の使い方・背景の写り込み・海外の動画の使用について・利用規約の確認・フリー素材の使用です。いずれも動画制作の際に気を付けたいポイントになるため、目を通しておきましょう。著作権のポイント1:音楽の使用基本的に、楽曲は全て著作権法などで著作者の権利が保護されています。著作権が適用される音楽を使用する場合は、著作権管理団体に申請と使用料の支払いが必要です。著作権の心配をせずに音楽を使用する方法は、楽曲をオリジナル制作することです。しかし、動画作成のたびに楽曲を作ることができない場合もあります。そのような時は、著作者が利用許諾を行った上で提供されている音楽素材も検討してみましょう。著作権のポイント2:背景の写り込み著作物や肖像権を有するものが背景に移り込む場合、映り込みの程度や分離可否で都度判断します。大きさや見え方などの写り込み方を確認し、撮影対象からの分離可否を判断し、分離可能な場合は分離や修正を行います。できるだけ写り込まないよう撮影した方が動画制作はスムーズになり、指摘されることも防止できます。また、恒常的に設置されている建築や美術の著作物の映り込みは、複製・販売の目的でなければ自由に撮影できます。著作権のポイント3:海外の動画を無断で使用しない著作物の著作権は、各国が著作権に関する協議を結んでいます。そのため、著作権は国境を越えて守られるものとして扱われています。日本で海外の著作物を無断使用してもバレないと思ってしまう方もいますが、許可を取らないと訴えられる可能性が出てきます。逆に、自分の著作物を海外の人が無断で使用している場合も法的に対処することができます。外国語の表記を理解しないまま使ってしまうケースもあるため、気を付けてください。著作権のポイント4:利用規約を確認する情報や素材を掲載しているサイトやメディアでは、掲載内容の取り扱いに関する利用規約が明記されています。その利用規約を見ることで、使用料や著作権など使用の仕方について知ることができます。動画制作に使いたいものがあった時には、まず利用規約を確認しましょう。著作権のポイント5:フリー素材を利用する創作を行いたい者に対して、フリー素材を提供しているサイトもあります。フリー素材は使用料や著作権の使用許諾を不要としている素材のことで、誰でも自由に使えます。法的なことを気にせず使えるため、動画制作の際はフリー素材の使用をおすすめします。ただし、フリー素材でも提供者により使い方の条件が異なります。条件なしの素材もありますが、一般的には商用利用禁止にしていることが多いです。必ず規約に目を通しましょう。著作権を侵害してしまった場合は?著作権侵害は犯罪行為として扱われるため、著作権者が告訴すると侵害者を処罰できます。科せられる内容は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金です。著作人格権と実演家人格権の侵害では、5年以下の懲役または500万円以下の罰金などが科せられます。法人などが侵害を行った場合は、3億円以下の罰金が定められています。動画制作の際に他者のコンテンツを利用する時は、著作権侵害にならないよう気を付けましょう。動画制作における著作権について理解しよう動画制作を行うにあたってはさまざまな素材を使うことになりますが、世の中に存在する素材(情報や作品など)を無断で使用することは法的にできません。著作権は法律ですので、守らないと損失が増えてしまいます。そういった事態を避けるためにも、著作権について理解を深めた上で動画制作に取り組むことをおすすめします。著作権のある素材がないと良い動画ができないわけではないため、フリー素材の活用など工夫をしましょう。